9人が本棚に入れています
本棚に追加
ああ、鳥が飛んでいる。鳩だろうか、その白い翼が突き抜ける晴天を勢いよく昇っていく。まるで、自らを縛るものは何もないのだ、というよう。
羨ましい。私への当て付けだろうか。あの鳥にはそんな考えは無いだろうに、荒んだ心は卑しい感情で満ちていた。
木材で組まれた簡易な台の上、垂直に打ち立てられた太い杭、それを背に縛り付けられている。もうどこがどう痛むのかもよく分からない。綱で縛られた手首か、あるいは鞭を無数に打ち付けられ、皮が血が飛び散った背中か。
風に吹かれる自分の髪が視界に入った。ああ、子どもの頃から自慢だった私の髪。今は手入れもされず荒れ放題の様子でかさかさと揺れている。
私がいるのは広場の中央。石畳のきれいな、この村自慢の場所。そこで縛られる私、そして私を囲む村人たち。彼ら彼女らの目には恐怖心と好奇心がない交ぜになっている。そこにふと知った顔を見た。私達夫婦の家の隣に住む、女だった。家庭のある身でありながら、私の夫をたぶらかし、果ては私を魔女だと告発した女だ。女の口角はつり上がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!