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松明が無情にも迫ってくる。そして私の足元にくべられ―。
「お止めなさい」
ふとひどく透き通った声が響き渡った。途端に視線が一人の女性に集まった。柔らかい金色の髪と凛とした白い肌。その女性は、その人そのものが光輝いているように錯覚させるほど眩しかった。彼女は人混みを、まるで何でもないようにするすると進んできた。肉団子が散り散りになる。私に死の宣告をした神父の脇を通り過ぎ、私の前まで来てふっと微笑みをこぼしたあと、振り返って村人たちに対峙した。
「彼女は魔女ではありません。魔女は、悪魔はむしろ別の者たちに取り憑いているのです」
それを聞いて、村人の塊は不平を噴出させた。
「女、何を根拠にそのような妄言を口にするのか。よもや貴様も魔女なのか」
民衆を代表するように神父が毅然と問うた。
「妄言はあなたの方です、神父様。そのようなことは神の名の下に明らかではありませんか」
すげなくそう言い切ると、彼女は胸の前で十字を切り祈るように両手を重ね、こう囁いた。
「天にまします我らが父よ、どうか我らを導きたまえ」
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