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「可愛いね、藤野さん。俺けっこう、その顔に出る性格好きよ。――あと、騙されてるって言ったって、根本的なところ、志賀さんが藤野さんを好きだってところは本当なんだから。そのあたりは頭に入れておいて」  好き勝手に言って横井はベンチの背もたれに寄りかかった。電子タバコの水蒸気が長く細く天井に上っていく。  藤野は受け取ったコーヒーをこくりと飲む。どう答えていいか分からなかった。  沈黙がしばらく続いた後、横井がおもむろに「志賀さんなくしていいの?」と煙を目で追いかけながら問いかける。  質問の意図が分からずに黙ったままの藤野を横井が横目で見た。 「北里がさ、志賀さんに再アタックするって。志賀さんが傷心の今がチャンスだって」  藤野が顔をしかめる。 「どうぞご勝手に。俺はもう志賀なんてどうでもいいから」  横井がまた苦笑する。 「本当にいい? 志賀さんが藤野さんにしたようなことを、北里にするんだよ。どう?」  思わずぎくりとした。
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