202人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
「可愛いね、藤野さん。俺けっこう、その顔に出る性格好きよ。――あと、騙されてるって言ったって、根本的なところ、志賀さんが藤野さんを好きだってところは本当なんだから。そのあたりは頭に入れておいて」
好き勝手に言って横井はベンチの背もたれに寄りかかった。電子タバコの水蒸気が長く細く天井に上っていく。
藤野は受け取ったコーヒーをこくりと飲む。どう答えていいか分からなかった。
沈黙がしばらく続いた後、横井がおもむろに「志賀さんなくしていいの?」と煙を目で追いかけながら問いかける。
質問の意図が分からずに黙ったままの藤野を横井が横目で見た。
「北里がさ、志賀さんに再アタックするって。志賀さんが傷心の今がチャンスだって」
藤野が顔をしかめる。
「どうぞご勝手に。俺はもう志賀なんてどうでもいいから」
横井がまた苦笑する。
「本当にいい? 志賀さんが藤野さんにしたようなことを、北里にするんだよ。どう?」
思わずぎくりとした。
最初のコメントを投稿しよう!