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 志賀、北里、横井。この三人を見かけるたびに頭の中が煮えたぎった。  北里が仕事の件で藤野のところに来ても、藤野は返事もしないで書類だけを受け取る。何食わぬ顔でやってくるのがものすごく頭にきた。  最初はしおらしい様子をしていた北里も、返事もしない藤野の様子にとうとう「業務とプライベートは分けてください」と苛立った様子で告げるほどだった。ただし、小声で。  藤野は黙ってそれを睨み返す。  社会人としては、北里の言うことのほうが正論なのは分かっている。  だけど、この煮えくり返るような感情をどうすればいいのか藤野には見当もつかなかった。  北里を押しのけて席を立つ。  二十七年の人生で、ここまで腹が立ったのは初めてだった。
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