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むしろ、穏やかな性格だと思っていた自分に、こんなに激しい感情があったことに驚いた。
誰かを苦手だと思うことはあっても、顔も見たくない声も聞きたくないと思うほど嫌うことがあるなんて想像もしなかった。
ここ数日のそんな様子に、とうとう室長が口を出した。
室長席の前に藤野と北里を揃えて呼び出す。
「藤野君、一体なにがあったんだというんだ」
答えられるわけがない。藤野は黙る。
「北里君は」
「さあ。僕には分かりません。突然ですから」
しらじらしい答えに、かあっと頭に血が上る。藤野は北里を睨みつける。
「このあいだまではうまくやっていたじゃないか。いいペアだと思っていたのに。相方がいないと困るだろう」
室長がため息をつく。
「藤野さんは一人でも大丈夫だと思います。優秀ですから。今だって、僕がやっているのは雑用くらいなもので、大して藤野さんの助けにはなっていません」
嫌味にカチンとする。
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