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 北里は相変わらず愛想も要領もよく過ごしているのに、藤野がそんな北里を頑として無視しつづけているのだから。誰の目から見ても悪者は藤野だった。  最近は、休憩室にいても藤野に近寄ってくる人はいない。  その日、そんな藤野の隣に珍しく座る社員がいた。  横井だった。コーヒーの紙コップをふたつ手に持っている。ひとつを差し出され、藤野は「けっこう」と短く言った。立ち上がる。 「まあ、飲んでよ。俺二杯も飲めないから」 「捨てたら」 「まあ、そう言わずにさ」  藤野のシャツの裾を引く。振り返れば、横井は顎を撫でながら藤野を見上げていた。にやにや笑う変わらない態度にむっとした。ちょうど休憩室に自分達以外の誰もいなくなったこともあって、藤野はしぶしぶ腰を下ろす。 「北里をさ、許してやってよ」
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