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「どうして許せると思うんだよ。あんなことされて」  横井にだって同じようなことをされたが、どうしてか横井にはあの二人ほどの怒りは沸かない。横井とは、つっけんどんながらも話が出来た。 「北里さ、あいつなりに必死なんだよ。分かる? 北里、志賀さんのことが好きで好きでたまらないの」  思いがけない言葉に藤野は眉をひそめた。 「北里が……?」 「一回告白して振られてるんだよ、あいつ。学生時代から片思いしてる相手がいる、って志賀さんに言われて。それって藤野さんのことだよ」  思わず横井を振り返ってしまう。  キザに伸ばした髭をいじりながら、横井は肩をすくめた。 「それでも志賀さんのそばにいたくて、志賀さんの恋の悩み相談なんかしちゃってさ。でも一対一だと本気になりそうで怖いからって、遊ぶ時には必ず俺を引っ張り出して。ほら、俺たち三人マイナー嗜好だから、こういう人種は結構仲間意識が強いのよ」  にやっと横井は笑った。片耳のピアスが光る。
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