202人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
休憩室から企画開発室に戻れば、自分の机の上に新しい図面が置いてあった。
藤野が現在作っている図面に繋がる箇所だ。
いずれは藤野が手がけなくちゃいけないブロックだが、予定から少し遅れ気味になっていた。
北里がすっと隣に立つ。
「有能な藤野さんには余計なお手伝いかもしれませんけど。使えなかったら捨ててください」
「手伝いなんかいらないって言わなかったっけ」
「でも、予定より遅れてるじゃないですか」
「いまさらこんなことされても、恩に着るつもりはないから」
近くの机の社員が北里と藤野を振り返る。聞き耳を立てているのが分かる。
「藤野さんのためじゃありません。志賀さんのためです」
北里の口から出た志賀という言葉に、心臓がどくりと音を立てた。
「藤野さんの評価が下がると、藤野さんを推薦した志賀さんまで割りを食いますから。ちゃんと仕事してください」
ぞくりとする。渦巻く感情に気持ちが悪くなりそうになる。
最初のコメントを投稿しよう!