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 横井の言葉が頭に蘇った。 『北里、志賀さんのことが好きで好きでたまらないんだよ』  北里の言葉に志賀に対する気持ちが透けて見える気がして、思わず厭らしいと思った。  だけど同時に、この気持ちに動揺させられるのも悔しかった。  藤野は奥歯を噛み締めて、北里を睨み避けた。 「――わかった。とりあえず、預かっておく」  ありがとう、とまで付け足すのは無理だった。  北里が離れるのを待って、藤野は図面を広げる。  ――なんだよ、これ。  正直に、いい出来だと思った。  奇抜なことはしていないけど、堅実な回路が組まれている。  ――志賀を、助けるため……?  細かいところまで一本一本丁寧に引かれた線に志賀に対する気持ちが見える気がして、右手の指先で回路をたどりながら唇を噛む。  あいた左手で図面をぐしゃぐしゃに握り締めたくなりそうで、藤野は左手を机の下にしまった。  ----------
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