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コンビニに寄って、ものすごく久しぶりに自分のためだけにビールを買った。
藤野は基本的に一人酒はしない。アルコールを買うのは、誰かが自分の部屋に来る時や、差し入れをするときだけだ。
だけど今日は、どうしても、飲んで、酔っ払って何も考えないうちに眠ってしまいたかった。
アパートの鍵を開け、玄関のそばにおいてある電話を見る。
留守電を解除してあるのだからメッセージが入っているわけではないが、つい見てしまう自分が悔しい。
電気がついていない部屋の奥は暗く、暗闇がじわりと藤野を取り込む。
ふいにぞわりと鳥肌が立ち、藤野は壁を叩くようにして電気をつけた。
奥まで見えるようになった部屋に少しほっとすると同時に、きりっと胸が痛くなる。
「……電話くらい、かけてこいよ! ……留守電がダメなら、携帯だってあるだろ……!」
自分でも勝手だと思うことをつぶやき、スーツも脱がないまま缶ビールのプルトップを引っ張る。
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