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 立ったまま一気に半分ほど飲んだ。慣れない飲み方をしたために、炭酸にむせて派手に咳き込む。  本社の玄関ですれ違った志賀の顔を思い出す。  来客とにこやかに歩いていたのに、藤野を見つけた途端にその表情がわずかに強張った。  それは本当にかすかな変化で、案内されていた年配の客人はそれに気付かなかったけど、藤野には志賀の動揺が手に取るように見えた。  拒否したのは自分だ。――だけど。 「信じて欲しいならもう少し粘れよ……!」  スーツのままベッドの前に座り込み、立て続けにビールを飲んだ。だが、何本飲んでも、酔っても、眠気は訪れない。  むしろ、炭酸が腹の中で膨れて気持ちが悪くなる。いや、もしかしてこれが、悪酔いというものなのだろうかと思う。頭の中に靄がかかったようになり、まともに考えられない。 「――信じろって、なにを信じるんだよ。何が本当で、どれが嘘なんだよ。ばかやろう」  床を握りこぶしで叩く。  ああ、何をしているんだろう、と、わずかに残った理性が自分に呆れる。
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