◆◇◇◇◇

2/20
前へ
/142ページ
次へ
 インターホンが鳴る音で目が覚めた。  いつの間にか部屋は明るい。朝だ。 「――あ、いたた」  ずきんと頭が痛んで、二日酔いだと自覚する。  目蓋が重いのも二日酔いのせいか、それとも泣いたせいか。 「どちらさまですか」  こめかみを押さえながら立ち上がり、玄関に向かって声をかけて、――藤野はぎょっとする。  ドアノブが動き、玄関が開いていくのが見えた。  鍵をかけ忘れたのだと今頃になって気付く。 「無用心な人ですね、ほんと」 「――北里」  姿を見せたのは北里だった。ジーパンにシャツのラフな姿。  一瞬で眠気が吹き飛び、藤野は北里を見つめた。それでも二日酔いのこめかみはずきずきと痛む。 「飲んでたんですか」  玄関に立ち、部屋の中に転がるビールの缶を見て北里は呆れるように言った。  言葉の中に含まれる険を隠そうともしない口調。攻撃的な気配を感じて藤野は身構える。 「こんなヌケ作で、人の気も知らずに一人で呑気にビールなんか飲んでる人のどこがいいんでしょうね」  北里は勝手に部屋に上がり、藤野の前に立った。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加