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インターホンが鳴る音で目が覚めた。
いつの間にか部屋は明るい。朝だ。
「――あ、いたた」
ずきんと頭が痛んで、二日酔いだと自覚する。
目蓋が重いのも二日酔いのせいか、それとも泣いたせいか。
「どちらさまですか」
こめかみを押さえながら立ち上がり、玄関に向かって声をかけて、――藤野はぎょっとする。
ドアノブが動き、玄関が開いていくのが見えた。
鍵をかけ忘れたのだと今頃になって気付く。
「無用心な人ですね、ほんと」
「――北里」
姿を見せたのは北里だった。ジーパンにシャツのラフな姿。
一瞬で眠気が吹き飛び、藤野は北里を見つめた。それでも二日酔いのこめかみはずきずきと痛む。
「飲んでたんですか」
玄関に立ち、部屋の中に転がるビールの缶を見て北里は呆れるように言った。
言葉の中に含まれる険を隠そうともしない口調。攻撃的な気配を感じて藤野は身構える。
「こんなヌケ作で、人の気も知らずに一人で呑気にビールなんか飲んでる人のどこがいいんでしょうね」
北里は勝手に部屋に上がり、藤野の前に立った。
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