203人が本棚に入れています
本棚に追加
「それが、藤野さんが来ることになってから、志賀さんは藤野藤野って、――藤野さんのことばかりになって……っ!」
口調が変わった。怒鳴りつけられて、かあっと頭に血が上る。
「自業自得じゃないか!」
思わず藤野は怒鳴り返していた。
「お前が自分から、俺と志賀をくっつけるために画策したんだろ。だったら、うまくいって願い叶ったりなんだろ。今更逆恨みするな……」
ばん、と耳元で音がした。目の前が一瞬白くなる。
床にたたきつけられたのだ。後頭部が割れるように痛んで藤野は思わず両手で頭を抱える。
吐き気までこみ上げて、藤野は顔を背けてえづいた。
「あんたは、疫病神なんだよ」
ぼわぼわとした耳鳴りの向こうに、氷のように冷たい北里の声が聞こえた。
「俺にとっても、志賀さんにとっても。志賀さんがなんて言われてるか知ってる? ろくでもないの連れてきたって。チームワークもできやしないって。――志賀さんだって、あんたがあんな態度取り始めてから、仕事でミスして始末書になって」
それこそ自業自得じゃないかと思うが、吐き気が喉に栓をして声が出ない。
最初のコメントを投稿しよう!