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他人への助言が洗練されていく一方で、自分の現実とのギャップに気付かれてしまうのではないかという恐れが増していった。他人の相談にこうやって応じている自分が、母親に百パーセント依存して引きこもりを続けているなんて、言える訳がない。他人のことを言えた身か、となじられ、そして自分がこれまで言ってきたことが全て否定されるのがオチだ。だから情けなくも自分の人生は順調であるふりをしていた。いま考えてみれば、順調な人生を歩んでいる人間が、あんなに頻繁に、昼夜を問わず掲示板に書き込めるのか疑問ではある。定年退職した高齢者が昼間時間を持て余していたとしても、夜は寝るだろう。そのことに気付いていた人もいるのではないかと思うと、背筋が凍る。
似たような状況の引きこもりに相談されたことも何度かある。それぞれに合ったアドバイスをしたつもりではあり、感謝もされた。しかし、それで状況を抜け出せたとか何かが変わっただとかの返事はもらっていない。この掲示板の性質上、問題が解決した人のほとんどはその後書き込むことはない。彼らの問題も解決したのだと信じることにした。
他人には立派なことが言えた。しかし、自分のことは客観視できず、その為に自分に適した解決策は見つからず、思いつくものを片っ端から試すほどのバイタリティも持ち合わせておらず、よって、自分については全く何も解決出来なかった。
自分に会いたい、と思っていた。もう一人自分がいれば、その自分に会うことが出来れば、今の自分が必要とする言葉、今の自分を変えてくれる言葉が得られるのではないか。そうしたら、この人生から抜け出せるかもしれない。そう願っていた。
そうして数年が経った。同じような日々の繰り返しだった。だから詳細は省く。
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