サファイアの指輪とカフェオレ

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サファイアの指輪とカフェオレ

一日遅れだけどお誕生日おめでとう。誕生日の翌日、ケーキの箱とカフェオレをたずさえた弟が、夕食後に部屋までやって来た。箱にはザッハトルテとイチゴのショートケーキが一つずつ入っていた。どっち食べる? 好きなのはザッハトルテだけど誕生日だしショートケーキかな? 迷っていると、誕生日の人はこっちでしょう、とショートケーキを差し出された。 しばらくの間たわいない話をしていた。そろそろ切り出さねば。彼女は心を決めた。しかし言葉が出てこない。あのさ、えーっと、その…… 結婚して下さいって言われたんでしょ。知ってる知ってる。 なぜそれを、と彼女は絶句した。先月、ご飯をおごってもらってさ、その時に、お姉ちゃんの誕生日にプロポーズするとか何とか聞いたんだよね。その時ついでに色々聞いたんだけど、お姉ちゃん、愛されてるよねえ。ほんと良かったね。俺としても、ああいう人が兄貴になるなら大歓迎だし。二人が何を話し合ったのか気になって仕方なかった。しかし、ほとんど何も聞き出せなかった。男の約束とやらで口止めされているらしい。 宝石が入った指輪なんて初めて見たよ。弟は指輪のケースを上下左右にひっくり返しつつ、感心したように溜息をついた。取り出してもいいと言っているのに、畏れ多いだとかもったいないだとか言って決して触ろうとしない。 指輪ケースを返そうとした弟と目が合った。お姉ちゃん、幸せってやつ、だよね? そうだね、一つの形としてはそうかな? 一つの形って?
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