休息

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「お前には、なんでも知られてそうで怖い」  感情も言葉も、あれこれとすぐに先回りされて、言葉が足りなくとも藤堂は敏感に察しすくい取ってくれる。それがすごく嬉しいと思う反面、それに慣れてしまったら、普段でも足りてないと自覚のあるコミュニケーションや言葉が皆無になりそうで怖い。そして無意識に周りに向けてしまうドロドロとした感情に気づかれるのが怖い。 「意外と佐樹さんは顔に出てますよ。見ていてすごくわかりやすい」 「そうか……いままでは、なにを考えてるか全然わからないって言われることが多かったけどな」  無関心過ぎるとか、無頓着で嫌だとか、もっとはっきりと気持ちを示して欲しいとも言われたことがある。でも僕はそんなつもりはなくて、僕なりにできる限りのことはして来たつもりなのだけれど、なかなか伝わることが少なかった。しかし最近、誰かにも同じようなことを言われた気もする。 「わかりやすいのか?」  思わず顔を両手で触って考え込んでしまった僕に、藤堂は小さく笑い微かな声で可愛いと呟く。 「可愛くない」  その言葉に僕は間髪入れず言い返した。すぐにこうやって藤堂は、僕に対して可愛い可愛いと囁く。いつまで経っても慣れないその言葉を聞くたびに恥ずかしくて仕方がなくなる。 「そういや、今日の調べてたのか?」  いまだ笑っている藤堂の脇を肘で小突きながら、僕は朝から疑問に思っていた行き先を問う。その言葉に頬を緩めて藤堂はにこりと微笑んだ。 「ええ、少し。以前にあずみから話は聞いていて、いつか機会があればと思ってたんです。でもこのあいだ一緒に出かけた時、人混みが駄目なんだなって気がついたので、ちょっと遠くなっちゃいました」 「……そうか」  片道に二時間近くもかかる場所へわざわざ行くのは、やはり僕の人混み嫌いを察してのことだったのか。あんなに短い時間でそれに気づかれるなんて思いもよらなかった。
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