休息

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 我ながら少々強引だと思ったが、すっかり雨に打たれたこの状態で、藤堂に風邪を引かせても困る。 「聞いてもいいですか?」 「ん?」 「どこに行くんですか?」 「ん、実家。ここから多分車で二十分くらいだと思うから、雨宿りついでに乾かしたほうがいい」  首を傾げる藤堂にそう言えば、ますます困惑した表情に変わった。いきなりの展開にさすがの藤堂もついていけていないのだろうか。夏休みの予定が少々早まってしまったが、まあこの際、構わないだろう。  去年の夏振りの実家。  玄関扉を開けば待ち伏せていたのかと思えるほどタイミングよく、母の時子が満面の笑みで出迎える。 「雨がひどかったでしょ。言ってくれれば佳奈を迎えに行かせたのに」 「母さんなにをしてたの玄関で」 「なにって、さっちゃん待ってたに決まってるでしょ」  しれっとした顔でそう答える母に、僕はうな垂れて肩を落とした。しかし息子の反応など気にも留めず、彼女は後ろで立ち尽くしていた藤堂にタオルを手渡す。 「いらっしゃい。風邪を引いちゃうからどうぞ」 「ありがとうございます。急にお邪魔してすみません」  僕の横をスルーして藤堂に歩み寄る母。元々ミーハーで面食いではあるが、このテンションの高さはなんだろう。 「いいの、いいの。上がっちゃって。えっと、はじめましてかしら」  そういえば明良以外の友達を実家に連れてくるのは、かなり久しぶりだったかもしれない。選択肢を誤っただろうか。
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