休息

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「はじめまして、藤堂です」 「そう藤堂、なにくん?」 「え、あ、優哉です」  母の勢いに気圧されながらもそう答える藤堂が可哀想になり、思わず身体が動いてしまう。あれこれと質問攻めにする母に笑みを浮かべながらも、藤堂はすっかり及び腰だ。いきなりこんな取って喰われそうな勢いで話されたら誰だって引いてしまう。 「もういいだろ。ほら藤堂、こっち」 「さっちゃんたらケチねぇ。佳奈ー! 優哉くんだって」 「呼ぶな!」  後ろを向いて大声を出す母は、リビングにいるだろう姉を呼ぶ。一人でも騒がしいのに二人揃えばさらにうるさいのはわかりきっていた。  藤堂を急かし家に上げると、僕は彼の腕を取り慌ただしく廊下を抜けて奥へ駆け込む。 「相変わらず騒がしいな、鬱陶しくて悪いな」 「いえ、むしろ可愛らしいお母さんですね」 「それは本人に言うなよ。調子に乗って巻き込まれる。……とりあえずこっち」  至極楽しげに笑う藤堂に僕は苦笑いを浮かべ、突き当たりにある風呂場へと続く脱衣場の扉を開いた。そしてそこへ藤堂を押し込み後ろ手で扉を閉める。 「やっぱり失敗したかな」 「なにを?」  思わず口にしてしまった言葉に、藤堂は訝しそうな顔で首を傾げた。 「母さんも姉さんも軽くあしらってくれていいからな」  母の時子や姉の佳奈に、これからあれやこれやと詮索されるであろう藤堂を思うと、なんとかしなければと頭が痛くなる。
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