休息

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「帰ってくるなり騒がしいわねぇ、佐樹は。明良くんがたまたま連休で実家に帰って来てたから、久しぶりだしナンパしただけの話よ」 「するなよ! って言うか、こんなとこでナンパしてる暇あるなら……って、また振られたのか」  二つ年上、次女の佳奈はいまだ独身で、実家暮らし。それほど顔がまずいとは思わないが、物事をはっきり言ってしまう気の強さがあり、彼氏に逃げられることもしばしば。どうやら今回も、半年前に付き合い始めた彼氏とは上手く行かなかったようだ。  しかしこういうサバサバした性格が合うのか、明良とはこっちに住んでいた頃からよく二人で遊んでいた。しかしだからと言って、そんなに気安く人の友人をナンパしてくるなと言いたい。とはいえ明良とは付き合いも長いから、なんとなく家族同然の間柄に近い感じもある。 「うるさいなぁ。それにしてもなんであんたの周りっていい男が集まるのかしらねぇ。誰か紹介しなさいよ」 「ひでぇな佳奈ちゃん。俺をナンパしといてそれはない」  佳奈姉の呟きに明良がムッとして口を曲げた。明良は自分の家族や僕の家族にも性癖は隠しているので、いつもこの調子でおどけてみせる。しかし佳奈姉はその顔を指差して目を細めた。 「だって明良くんは絶対駄目だと思う。いい男だけど一個の場所に留まらないで、あっちこっちふらふらするでしょ」  意外と佳奈姉の観察力は鋭いところがある。まさに普段の明良は恋愛していなければその通りだ。しかも恋愛している期間が短いので、ふらふらしていることのほうが多い。
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