休息

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「そうそう、今日は優哉くんに泊まっていってもらうことにしたから」  向かい側に座った母は急にまた予想外のことを言い出す。今日はなんでこうも予想外と言うか、予定外のことが起きるんだろうか。 「は? なんで」 「車で駅まで送ってもいいけど、折角こんなに人が集まってるんだから、みんなでご飯をしたいじゃない?」  訝しげな顔をする僕に母は至極楽しげに笑う。そうだった、母は人が集まる賑やかな雰囲気が大好きなのだ。いつもは二人きりの家にこうして人が集まって、妙なスイッチが入ってしまったのだろう。そんな母の笑顔と共に、明良もまた含みのある笑みを浮かべていた。 「お前も泊まるのか。実家が近いんだから帰れよ」  明良の家は車で五分ほどの距離で、この辺の田舎ではものすごい近所と言える場所にある。わざわざ泊まる必要性を感じない。 「なんだよ、さっきから冷てぇな佐樹」 「うちそんなに空き部屋ないけど」  口を尖らせる明良を無視し母を見ると、小さく首を傾げて彼女はとんでもないことを言う。 「さっちゃんの部屋は三人は狭いでしょ、客間があるから明良くんと優哉くんはそこにお布団を敷くわ」 「それは絶対、駄目だ」  母の提案に思わず大きな声が出てしまった。そんな僕の反応にこの場の全員が驚いた顔をしてこちらを見る。
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