休息

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 藤堂と明良を同じ部屋に二人だけなんてとんでもない。この雑食男と一緒になんて絶対にしたくない。友人の大事な人に手を出すほどひどい奴だとは思わないけど、二人にするのはなんとなく色んな意味で嫌な予感がするのだ。しかしそんな僕の反応に明良は後ろでぼそりと呟く。 「俺どんだけ信用されてねぇのよ」  少し呆れたようなその声に、僕は思わず睨み返してしまった。このふわふわ軽い男を信用しろというのが、いかに難しいことなのかを明良本人はわかっていない。 「信用できるか!」  明良は以前、渉さんのことを手が早い奴だとそう言っていたけれど、自分自身のことをすっかり棚に上げている。 「忘れてないからな」 「な、なにをだ」  小さな声で呟き、眉をひそめた僕に明良はわずかに怯む。  元々軽い印象がある明良だが。彼の馴染みであるBAR Rabbitへ連れていかれた時に、僕は自分の親友が色んな意味でだらしない男なのだということを知った。そしてなにが最悪だったかと言えば、この男は友人である僕を店に放置して帰ったのだ。たとえ酔っていたとしても、ありえない。 「大体、気に入れば即行でお持ち帰りするような男はまったく信用できない」  ぽつりと小声で返した僕の言葉に、明良はしまったという顔をして背中から離れていく。  あの日、明良はそこで知り合った人をいたく気に入ったようで、僕のことも忘れて、何度もしつこく口説きに口説きまくって、落としたところでさっさとお持ち帰りしてしまったのだ。
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