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間違いなく女の子だったらいちころだ。こんなにも一途でまっすぐなその瞳に見つめられて、堕ちない子はそうそういないだろう。
しかし何度も言うが――僕は生まれてこの方、同性に恋情を覚えたことはない。憧れや羨望で男気に惚れるというのはあるけれど。
「……かといって」
同性の恋愛に偏見があるわけでもないのだ。目の前にいるのが藤堂ではなく、女子生徒だとしても同じことを言った気がする。
とはいえこのハードルはいささか高過ぎる。まさに未知との遭遇。いざまっすぐぶつかられると、どう対応したらいいのかわからないものだ。
「西岡先生。困らせてすみません。けど、伝えておきたかったんです。……西岡、佐樹さん。俺は、あなたがずっと好きでした」
人生山あり谷あり。僕は教職に就いて初めて教え子から愛の告白を受けた。しかも相手は十五歳も年下の現役男子高校生。まっすぐ過ぎるその想いにもうすでに、脳みそがついていけてない。
甘酸っぱい青春は時間の波間に置き忘れてきた。そんな――三十二年目の春。
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