優美

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 それから数日かけて、学園の研究機材を除く、優輝の私物類は寮の部屋から運び出された。終盤になると学園長宅の自分の部屋はそれなりに様になった。その間、優美がどんな女性かを観ていた。まず、スマホは持ってなく、折りたたみ式のガラ携を持っている。パソコンは使えるが、ネットの発言投稿サイトは開設してない。彼女にとっては、ただ面倒くさいというのが理由だ。  身長は優輝の方が高いが差はほとんどない。意外にも勉学は豊富。スポーツも積極的だ。ランニングも水泳も球技も興味が沸けばやってみる。だから、あれだけ締まりのある身体なのだろう。  中学、高校、大学からその分野は女子と男子の憧れも的だったとも聞く。けど、対照的に家庭の事は出来ない。これまでの同級生は優美の家での過ごし方を知らないだろう。お世辞にも女性らしさがあるとは言えない。女性らしさがあるのは顔と身体だけ。というより、お嬢様育ちのくせして人間失格だ。優輝と学園長の前を下着やバスタオル姿で通る事もある。ベッドでは必ず全裸だ。  対して、優輝は和食洋食の料理とお菓子も作れる。得意なのはブランデーを効かしたドライフルーツ入りパウンドケーキとプリン。  優美は手作りのお菓子を美味しそうに食べてくれたのは幸せな一時だったが、それで優美が何かチャレンジしてみようかという事にはならなった。  掃除だって、優輝はイスを動かしてテーブルの下のゴミをとったり、絨毯をめくるなどしてきちんとやるが優美は『四角い部屋を丸く掃く』だ。  洗濯だって、ハンガーに服を通すとバランスが悪く、洗剤と柔軟剤の違いもわかってないひどさだ。台所の食器洗い機だって優美のためにと学園長が買ったが使ってない。  母親がいなくて教えられなかったから自ら一人でやってきたという学園長。十五歳の男の優輝にもできる掃除、洗濯、料理がこの女には出来ない。女性だからこの三要素があって当たり前だというと差別的発言になるが、それでも最低限の事が出来てもいいはずだ。しかも、出かければ必ずどこかの男と遊び、アルバイトの経験も無いという世の女性の面汚しだ。  これなら、僕の方がずっと女らしい。一つ屋根の下で暮らすうち、優輝にそのような思念が段々と強まった。  学校という学校の春休みも終わり、新学期が始まる。愛良学園の学園長も新学期と新入生を迎え入れるのに忙しくなるのでまたしばらく家を開ける事になる。
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