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学園長がいない間は優輝がこの家の家事を引き受けた。学園長の頼みではなく、優輝自ら申し出たのだ。それに、彼としてもやるのは苦ではない。食事も手料理としている。
ある日。優美が大学で家にいない時に、優輝が洗濯物を片付けていると優美の女性服に目がいった。羨ましさと共に、これらの服の主があんな女という事に恨めしく思えた。
自分の『女』としての感情が抑えきれなくなった優輝はストレス発散に優美の服を着て、学園から持って来たウィッグを被ると鏡に姿を映した。彼は驚いた。
鏡の中には『優美』がいたのだ。微塵の差もない程にそっくりだった。ウィッグの髪が長かったので短く整えてみると、完璧に優美だった。ブラジャーはサイズが余ったが、丸めたタオルを詰め込んで服を着ると体まで同じになった。
いや、女性らしさを踏まえれば本物以上になる。それは男ゆえの勝利の悦びを覚えるのと同時に、本物の女の優美への憎しみも芽生えた。
優輝が優美への怒りを爆発させたのは、数日後の夕飯。自室で研究を踏まえた勉強をしていると、優美が夕飯を用意したと呼んできた。
彼女が夕飯を作るなんて初めてだ。男の自分が食事を作っているので少し学んだのだろうか?
そう期待をしたのだが、甘かった。テーブルの上にあるのは『作った料理』ではなかった。どこにでもあるような宅配ピザと炭酸ジュース。デパ地下の惣菜売り場にあるようなパック入りの握り寿司、ポテトサラダ・・・・。
これは彼女が利用する買い物用のポイントカードの有効期限が来るので全部使い切るために購入したのだとか(ポイントを溜めるのに注ぎ込んだお金は学園長が出したものだ)。
大皿の中のナポリタンスパゲッティは茹でたてだが、ソースは市販のレトルト系。しかも、麺は茹ですぎで食感が最悪だ。
そんなパスタをすすっていると、優美が破廉恥な事を聞いてきた。
「ねえ、優輝君はエッチの経験ある?」
この言葉にむせて食べる手を止めてしまった。驚きより腹が立った。
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