入れ替わり

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 優輝が荒い呼吸をしていると、優美が「ご苦労様」と枕元に何か置いた。  一万円札。それが二枚。 「パパからのお小遣いよ。お礼にとっておいて」  優美の言葉に優輝の疲労は消し飛び、憎悪の炎が噴き上った。自分の純粋はこの女の私利私欲の金と引き換えに奪われた。それも自分で稼いだ金じゃなく、親から与えてもらった金で。  この女は、人間じゃない。魔女・・・。いや、魔物だ!  優美は優輝の心に生まれた激しい怒りなど知るよしもなく部屋を出て行く。「戻ってきたら本番を始めましょう」と。  優美は戸を閉じることもなく階段を降りていく。優輝は決めた。  彼は身体を起こすとベッドから降り、机の引き出しを開けた。その引き出しの奥から手のひらに納まる小箱を出した。中には半透明の緑の液体が入った楕円形の密封容器。一方には細く短い口が伸びている。そこから液体を吸引と射出するようになっている。その証拠に、筒型の極細の針が見える。  優輝はそれを一つ出すと箱を元通りにしまい、液の入った容器を枕の裏に隠した。  その頃、優美は裸のままキッチンに入り、冷蔵庫から缶ビールを出して飲んでいた。  無論、大学二年の彼女は未成年だ。口の端からこぼれるのも構わずに飲む。  満足した息を吐くと、空になった缶を夕食で散らかったままのテーブルに置いて、次に彼女の父の小さなキャビネットを開くと、年代物のウィスキーに口をつけて三回喉を鳴らした。  彼女独自の『お清め』が終ると、優輝の待つ部屋へと向かう。  部屋の前の脱いだ服は変わらないまま。変わっているのが部屋の明かりが就寝用のオレンジの光になっている事。寝てしまったかと心配したが、違った。優輝は起きていた。弱い灯かりの中でベッドに腰掛ける彼の影の色は強く、目は妖しく光っている。  しかし、今の優美にそんなものは恐怖の光景にならない。逆に本番も備えたムード作りとしか思っていない。優輝が微笑みながら手を差し出すと、優美は手を重ねた。  そして、唇を重ねると優美が下、優輝が上になる。優美のアドバイスを受けながら優輝は優美の身体に触れる。  時間をかけると、優美の性の証が熱く光り始めてきた。準備が整った。 「さ、優輝君。来て」  優美は誘いの言葉をかけたが、優輝は無視して優美に口付けをする。じらしているのだと愉しみに浸る優美は優輝の背中に手を回す。それと同時に優輝の手が枕の下に潜り込んだ。
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