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優輝は口付けで優美を押さえ込んだまま、容器の先端の針を優美の肩に刺し、指で押して中の緑色の液体を注入した。
小さな傷みに優美は顔を遠ざけ、針の刺さった箇所を見る。薄明かりでも、針の痕からは赤い血と緑の液体が僅かに染み出ているのがわかる。
「優輝君、何をしたの?」
「知りたい?」
優美は頷く。優輝の口は笑みの形だが、目は笑っていない。
「これはね、僕が作った毒薬だよ」
「う、うそでしょ?」
優美は優輝の冷たい目と笑みに冗談ではないと悟る。
「な、何とかして。私、死にたくない!」
「いやぁ、もう手遅れだよ。でもね、こうなって当然だよ」
「ど、どうして?」
「女性の恥さらしだからさ。君みたいな女性は生きる資格が無いよ。それに子供が産め無い事を不満に思っているんなら好都合でしょ?」
優輝からの死の宣告に息苦しくなり、優美は胸を抑える。
「始まったね」
優輝は優美の様子を観察する。
「人に使うのはあなたが初めてだけど、動物実験でどうなったか教えてあげるよ」
優美は息苦しさを増幅させるように心臓が突然大きく波打った。
「まず、心臓が膨張して・・・」
身体の内からくる強靭な傷みに優美は顔を歪める。「次に肺が固まって、呼吸不全になって・・・」
苦痛とは違う涙を流す優美は水から上がった魚のように必死に息を吸う。
「最後に、体中の神経が過敏になって・・・」
柔らかいベッドの上にいるのに全身をかきむしりたい痺れが流れた。しかし、身体が動かない。
「身体の温度が一気に低くなるんだ!」
何の前触れも無く四肢に寒気が襲った。その寒気は乱れた動きをする心臓と空気を求める肺をも襲い、過敏に痛みを発する神経を後押し、それが脳に到達する。
「ギィャアァァァァァァァァァーーーーー!!」
優美は滝のような涙を流しながら大きな悲鳴を上げて全身を震わせた。脚はビクビクと跳ね、手はシーツを破くのではないかという強さで握り締める。
優輝が豊かな胸を握ると神経が絶たれる痛みが来て、乳首を噛まれれば狂いそうになる。
一息ついた優輝は枕元の時計を見ると自分の腰を上げ、勢いを付けて優美に押し当てた。
「ヴぉっ!!」
優美は荒い声を出した。
「あと三分で死ねるから。それまでに最高の時間を愉しませてあげるわ」
優美は目の上の少年に女のような口調が混じった事に気付いたが、下半身から来る電流のような刺激にその思考は失せた。
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