理想の姿

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 存在のない男の証を包んでくれるかのようなパンティも穿くと床に散らかった物を片付け始めた。  上半身を曲げてゴミを拾おうとしたら、接着剤でくっつけた男の胸が、作り物の胸の重さで引っ張られた。さすがに辛いので両膝をついて片付ける事にした。  部屋の中を往復していると、硬い物と柔らかい物を同時に踏んだ。何かと下を見たが、・・・見えない。仕方なく半歩退くと、羊と猫の小さいぬいぐるみが紐で結ばれた家の鍵だった。下が見えにくいが、優美として生きるには贅沢な悩みとしておこう。  やっと、掃除が終わった。  いよいよ、私服の棚を開ける。こちらも身体に合わせた服がハンガーから綺麗に下がっている。自分の判断で好みに合ったのを出す。今日は学園長・・・・、パパが帰ってくるので美味しい料理を作りたい。だから、外に出て食材を調達しなければ。  ベッドに腰掛けると、ニーソックスに足を通し、フレア・スカートのワンピースを着た 。  ウィッグを被って鏡に姿を映すと、女性らしい自分の姿に頬を赤らめた。鏡で再度自分の姿をチェックして、着崩れしてないか一回転する。大丈夫。完璧だ。  畳まれたままのボレロと財布を入れたバッグと帽子を持って下に降ると、オレンジジュースを注いだドライフルーツ入りシリアルと紅茶を朝食にする。朝食が済むと昨晩の洗濯物を干す。優輝が必要となる時はまだ来るので両方共丁寧に扱った。
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