女子大生 優美

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 優輝が優美となって、数週間経った。桜の花は散って、新緑に。  誰も彼女の真実を知らない。それよりも、うまくいっている。だから、何でもなく大学二年の学校生活を始められた。少しの苦労といえば大学を始める事。最初は広大な敷地内のどこに何があるか右往左往したが、二年目という新学期が幸運にも重なったので他の大学生と同様に講師や担当者から聞いて場所を覚え、勉強をしている。  勉強も中学と学園で習った事に改変を加えたような話中心の授業なので思っていた苦労は無い。  優美が『優輝』だった頃からの経験が活きているのだろう、もう女性の服を着るのは自身の一部と化している。自分ですら女が本来の姿と考えているくらいだ。だから、化粧をさほどしなくても充分に外出できる(前の優美も同じく化粧をあまりしてなかった)。  他の苦労といえば、『初対面』となる友達の女学生だ。  しかし、そこは優輝。挨拶をされても、笑みとキャピキャピした口調で「誰だっけ?」と返す。そうすれば、「もぉ~、とぼけちゃって」と相手も冗談として受け取って名乗る。それからは誰かと一緒に同行していれば相手に手を振って呼ぶ時に名前を言ってくれたり、スマホの写真を見せてくれる事で名前と顔は全て覚えられた。  ありがたい事に友達の数は六人。皆、棘や腹黒さの無い性格だったので普通に付き合えた。  付き合いを止めたのは、男相手。以前の優美と関係を持った者もいれば、デートを申し込む人物もいる。そうなると、最悪の場合に身体を知るような事態を招く。だから、男子学生達には「勉強に専念する」とか「自分を磨きたい」と拒絶にならない拒絶を言っておいた。  その甲斐あって男達は素直に離れていって、優美は大学を満喫していた。
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