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早朝。男服の優輝が台所に立って、朝ご飯を作っている。トースターに食パンを入れ、焼きあがる間にバターを溶かしたフライパンでオムレツを作る。
綺麗なオムレツが出来るときつね色になったトーストと一緒に皿に盛り、横に半分に切ったキウイを添えた。ケチャップ、バター、ジャムも並べる。
最後にコーヒーを沸かしていると玄関の戸が開く音が聞こえた。朝のランニングを終えた学園長が帰ってきた。
優輝が「おはようございます」と言い、ランニングウェア姿の学園長は廊下を進みながら気持ちよく「おはよう」と返しながら浴室に向かった。
シャワーを浴びてスーツに着替えた学園長は優輝と朝食を食べ始めた。
「悪いね。家事をやらせたりして」
学園長は申し訳なさそうに言う。これは学園長の誠意の現れだ。優輝はそんな学園長に微笑みながら、朝食の手をいったん止める。
「僕の感謝の気持ちですから。それに学園長が毎朝がお茶漬けなのを見るとちょっと心苦しくて」
「まあ、優美が朝ご飯を作る事が無かったし、私も忙しいからね」
それは事実だ。ただでさえ忙しい身分なのに、家事どころかご飯も作らないとは。以前の優美は親に感謝の気持ちがいかに無かったか。
学園長はオムレツをスプーンですくいながら、見えない二階に目をやる。
「ところで優美は?」
「寝てます。もう少し寝たいって言ってました」
「まあ、いつもの事だから構わないが」
「ええ。僕も、もう慣れました」
二人は朝食を食べ終えると、優輝は簡単に汚れを落として食器洗い機に入れて、動かした。
学園長が車で出発するのを確認すると優輝は身に付けていたエプロンを畳んだ。優輝の時間は終わり。これで優美としての時間を過ごせる。
優輝は優美の部屋に入ると、来ている男の服を捨てるように脱いだ。
下はパンティを穿くと、スカートに脚を通した。上は人工胸を付けてからブラジャーに両腕を通すと、ボタン式の上着を着た。
最後にベッドの上の枕に寝ているように偽装したウィッグを取り上げ、頭に被れば<今日の優美>が生まれた。
鏡で顔に軽くメイクを施すと、完璧に美しい。
脱いだ男服を洗濯籠に放りこむと、鞄を持って大学に向かった。
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