女子大生 優美

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 意外な言葉に優美は耳を疑い、「どうして?」と問う。 「怖いのよ、あの人。前に、デートに強引に誘われたから」 「え? ちょっと、その話よく聞かせて」  聞くと、絵里奈は二週間前のアジア史は体調不良で受講できなかった。そうなると、その日のノートは空白。そこで派遣教授にどんな内容か訪ねたが、教えるのを条件に強引な『誘い』をしてきた。後でわかったが、その派遣教授はこれまでに何人もの女の子と問題を起こしているらしいが、何故かうやむやになっているという。  話を戻そう。絵里奈は怯えながらも必死に断ったが、挙句の果てには派遣教授は言う事を聞かないと単位を落とすと脅してきた。頭の中が真っ白になりかけた時、名前も知らない男子学生が助けに入り、派遣教授を一括すると一緒に逃げてくれたとの事。  その男子生徒とは同じ授業を受けてはいないが、何度か会ううちにお互い恋心が芽生えて、少しずつ交際をしている。ただ、結局のところ、アジア史は授業をどうするか悩んでもいる。これが優美にノートを借りるまでの経緯だ。しかし、絵理奈にはこれで終わりという単純な内容ではない。 「なんか、怖くて。授業中も、それ以外でも、見られてるみたいで・・・」  絵理奈はぽつりと悩みを漏らしたが、それだけ彼女には精神的に毎日がきついようだ。  昼食後、絵里奈と別れた気になった優美は派遣教授の部屋がある教員棟に行ってみた。純粋な心を持つ絵里奈を助けたい気持ちがあった。幸いにも、午後一の授業は無い。  入口の札で部屋を確認すると階段で目的の階に来た。他の教師達は授業に出ているので静かだ。と、扉の一つが開いて誰か出てきた。  あの派遣教授だ。手には呼び出し音のなる携帯電話。優美は通路の死角に隠れた。  派遣教授は突き当りのトイレに入った。耳を澄ませると、扉の向こうからは教授の下品な笑い声が聞こえてくる。全てを聞き取れないが、付き合った女の子のスタイルだとかを平気で相手に話している。  自慢話に夢中になっている間に、優美は派遣教授の部屋に入った。
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