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向かう家はレストランからそう遠くなかった。ただ、住宅街にしては人気が無い。元々、ここの住宅地は優美の行く大学に合わせて立てられたが、近年は学生家族の減少と人口流出でほとんどが空き家になり、門や扉には『中古格安物件』の張り紙が目立つ。かといって、学生が買うには無理があるし、駅から近いというわけでもない。車を使っても、生活品を買う場が乏しい地域なので仕方ないとも言える。それで、こいつらはこの寂れた家を動画の収入で購入できたという訳だ。
さて、家はそれなりに大きな二階建てで、敷地はブロック塀に囲まれている。シャッターの着いたガレージもあるが、路地に面した家の角から出る必要があるので、通りに出るには不便な構造だ。
玄関をくぐると、開かれたままの靴入れには色々なブランドのスニーカーが押し込まれていた。
リビングはお世辞にも掃除が行き届いているとはいえない。色々な銘柄の外国製ビール瓶がテーブルに並んだり転がってたり、半玉だけ残って切り口が乾いたメロンや皿に放っておかれたままの上質なハンバーガーも食べかけだ。二人はそれらを大きなゴミ袋に分別無く無造作に突っ込んだ。
部屋が『綺麗』になると、優美は単刀直入に二人に訊いた。
「ねえ、あなた達は私とエッチしたい?」
その言葉を聞いた男二人は驚いて手を止め、顔を見合わせた。そして、すぐに下衆丸出しの笑みで優美に向き直った。
「いや~。実はそうなんだよ」
「自分からそう言ってくれると助かるよ」
やっぱりな。どうせ、そうだろうと思ってたよ。<優美>はスマイルサービスの裏に冷徹な笑みを己の心中で浮かべると、ハンドバックから二つの霧吹き瓶を出した。片方の液は黄色。もう片方は青だ。
「シャワーを浴びてくるから、あなた達はこれを使って待ってて」
「これ、何なの?」
緑男の質問に、優美は丁重に答える。
「ムードを盛り上げる香水よ。この二つが混ざると、すごくいい気分になるの」
優美の説明が終わると、早速、男二人は先を争うように霧吹きを噴射した
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