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浴室には高級ブランドのシャンプーやボディソープが並んでた。優美はウィッグを取り、人工胸を外して<優輝>になるとシャワーを浴びた。
あの二人に渡した二つの液体はもちろん、香水ではない。あの液体は単体では効果はないが、二つが混ざると毒性を生む。人体で行なうのは初めてなので結果が楽しみだ。
ボディソープとシャンプーのおかげで、身体と髪の艶は今までに無く増した。やはり、ブランド品は違う。シャワーを終えるなり、洗面台の鏡に映る、全裸の優輝は己の美しさに浸っていた。
やっと思い出したように、優輝はタオルを手に、そのままの姿でリビングに向かった。
リビングでは男達はカーペットの上に倒れていた。ピンク男は死んでいるが、緑の方はまだ息がある。緑男は部屋に優美が入ってきたと思い、助けを求めようとした。だが、来たのは見知らぬ少年。息は途切れ途切れだが、かすかに驚きの声を挙げた。
「驚いたよ。まだ生きてるなんてね」
優輝は足元の男を妖しい目で眺める。
「だ、誰だ、お前は・・・?」
「誰だ、は失礼だな。<私>よ」
優輝は両膝を綺麗に着いて姿勢を低くすると、手にしているタオルからウィッグを出し、被って<優美>になった。
「びっくりした?」
優美が偽りのない笑顔でウィンクすると、緑男は死にかけとは思えない怒鳴り声を出す。
「ざけんな・・・! オレ達を、騙したのか! クソ! 男のケツを触った・・・っ!」
男の決死の怒鳴り声は中断された。優美が男の股間を踏み潰しているからだ。
踵に力を入れる優美に一切の表情はない。蹴るのでは激痛の時間は一瞬だが、こうして踏んでいれば痛みはそのまま続く。もう声を出す気力すらない。
長い時間をかけて、優美はようやく足を離した。位置を変えて、指の一本も動かせずに涙を流して荒い呼吸をする男の緑色の髪を掴むと、リビングから引きずっていった。
翌日も優美はアルバイトに励んでいた。 短い間で驚くほど板に付き、受注、接客、運搬を完璧にマスターしていた。チーフからアルバイトを継続しないかと持ちかけられたが、丁重に断った。
自分としては働くのに忙しいのは不満が無いが、こういう目の回るような忙しさは苦手だと思う。もう少し、落ち着いた忙しさで働けるところを探そう。
優美はそう考えながら、休憩室で他の女性達とドリアの賄を食べていると、裏口から外に出ていた男性のアルバイトが戻ってきた。
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