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ガバッ!!
勢いよく目を覚ますと、僕の机の周りでは、七瀬や他数人のクラスの友人が笑っていた。
「よく寝てたな、牧田。B組の眠り姫の称号でも狙ってるのか?」
ニヤニヤしながら冗談を言ってくる。
「そんなんじゃないよ。ていうか、授業は?」
僕は夢の中で蹴られた左頬を撫でながら、七瀬の冗談を軽く流す。
うん、左頬は痛くない。
「さっき終わったとこだよ。そんで、最後の挨拶の時もぐっすり寝てた牧田に先生からの伝言だ。放課後職員室だってよ」
「マジかよ・・・」
七瀬が笑いを堪えきれないといった様子でそう言うと、僕の周りでまた笑いが起こった。
「とりあえず、顔でも洗ってきたら?授業中にあの寝方はやばいぜ」
「あぁ、そうするよ・・・」
カバンからタオルを取り出し、教室を出る。
先生に呼び出しを食らったこともショックだが、それ以上に、僕はさっきの夢のことが気になっていた。なぜ僕の夢に眠り姫が出てきたのか。そしてまさか蹴り起されるとは。あぁ、そうだ。後で『夢から覚める方法』も調べておかなくちゃ。また蹴り起されるようなことがあれば堪ったもんじゃ・・・
「あ、君。さっきの・・・」
聞き覚えのある声に思考を遮られ、足を止めて顔を上げると、そこにはA組の眠り姫が立っていた。
「えっ・・・・と・・・・」
驚きで言葉が出ない。さっきのって夢の中のことか?それとも昼休みに覗きに行ったのを見られてた?
「ダメだよ。授業中はちゃんと起きておかなくちゃ」
ニコニコしながら眠り姫はそう言った。
その言葉でやはり、さっきのとは夢の中でのことを指しているのだと分かった。
「次からはちゃんと起きていられるように頑張るよ」
聞きたいことはたくさんあったが、何から聞けばいいのか考えがまとまらなかったので、僕はとりあえずそう返した。
すると彼女は満足げに笑って、また歩き出した。
その姿を目で追っていると、彼女は思い出したように振り返って、
「あぁ、でも安心してよ。もし寝ちゃっても、私がまた蹴り起してあげるから」
いたずらな笑みを浮かべながらそう言って、女子トイレに入っていった。
一体彼女は何者なのか。。。
「顔・・・洗うか」
そう呟いて、手洗い場の蛇口をひねった。
四月の水が、僕の火照った顔に心地よかった。
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