読心術殺人事件

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 ところが、時代は変わっていく。小説の中でトラベルミステリーやユーモアミステリーが主流を占め始め、やがてホラー小説も出回るようになる。  人々は荒唐無稽なSF小説よりも日常の中に潜む不思議、嫉妬、恐怖に興味をむけ始めたのだ。  SF小説は売れなくなり発表の場を削り取られていった。急がしかった大樹の生活にもゆとりがうまれたかのように見えたが、やがてゆとりも暇に感じられるようになってくる。忙しいときには家庭のことなど(かえり)みることはなかったのだが、暇になると急に家庭のあらが見えるようになってきたのである。  妻に小言をあげつらい喧嘩も増え、大樹がアルコールを口にする回数は増えていき、愛子に手をあげることも多くなってきた。  ついにある朝、目覚めると愛子と幼い娘は姿を消していた。
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