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愛子と娘が出ていってから大樹の生活はさらに荒れ、小説の連載まで滞るようになってきた。
見かねた両親が実家にもどるように説得し、ともに生活することになった。
大樹は実家と仕事場の境界線はしっかりと引きたいと主張し、隣町にアパートの一室を借りた。毎朝、八時発の電車で四駅、約二十分間ゆられ出勤した。駅からは、約十分で歩いて行ける距離にアパートはある。
大樹がわざわざ電車通勤を選んだ理由は他にもある。彼は高校時代に毎朝のように電車通学の中で読書することが大きな楽しみであった。立ちながらの読書は決して良い環境とは言えなかったが、あの時代の読書が現在の大樹の作家生活の基本を培ってくれたような気がするのだ。
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