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朝の通勤ラッシュの時間帯とはわずかに時間がずれているので、なんとか座ることができる。大樹は電車ではずっと本を見て顔を上げることなどなかったのだが、最近顔を上げて窺う乗客の様々な表情を読み取り、表情の変化だけでなく心のつぶやきまでが聞き取った。
心のつぶやきが聞こえるようになったのは今に始まったことではない。
小学生の時、先生や友だちの心の声が大樹にはすでに聞き取れていた。
周りの人はみんなこういう風に他人の思いを聞き取れると思っていたのだが、小説を読むようになってから、どうやらそうではないらしいと気づき始めた。
人の心のつぶやきが聞こえるというのは自分だけなのだ。
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