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「よお、ヒバリがいつでも俺を殺せるように、わざわざ来てやったぜ?」
「.…………」
無言で扉を元に戻そうとすれば、ガッと太い指でそれを阻止されてしまう。
「なんだよ、つれねぇーなぁ。部屋、入るぞ」
良いですも何も言っていないのに半ば無理やり隙間に身体をねじ込ませ、部屋に侵入してきた無作法者に、呆れて言葉も出ない。
「どうしたんですか、こんな遅くに。今日は早く寝ないと、明日の襲撃が、……」
思わず声が裏返ってしまった。
「あ、あの、何してるんですか?」
声音に緊張が滲む。
だって、ジンがいきなり私の身体を、強く抱き締めてきたのだから。
「ようやく、会えた」
腕を後ろに回されて、背骨が軋むくらいに強く力を入れられる。
「俺はお前のことを、ずっと前から探していた」
艶やかな黒髪が、額にかかってくすぐったい。
「えっ? ど、どういうことですか?」
「覚えて、いないのか……。まぁ、それもそうだな。俺たちが出会ったのは、生まれてすぐだったし、お前はすぐに上空都市に行ったからな」
昔から知っているような口振りと態度を見せる彼に、私は戸惑いを隠せなかった。
「私はジンさんとは、初対面です。私は15歳の上空都市で働いている少女で、貴方は30歳前後の、地上に暮らしていた男性。一体、どこでどう知り合うと言うの?」
抱き締めていた身体を離し、彼は長い睫毛を揺らしてこう言った。
「違う。俺は30歳じゃない。本来ならヒバリと同じ、15年しか生きていない青年だ」
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