episode:2

8/11
前へ
/31ページ
次へ
静寂に包まれた室内では、自分の息遣いが音となって耳に届く。 「貴方が、15歳の青年……?」 「そうだ。俺たちは、地上に住む人間は、流される電波のせいで通常の2倍のスピードで身体が老いていくんだ。平均寿命が40歳と言ったが、あれは40年間しか生きられないという意味であって、見た目はちゃんと80代の老人になっていくんだ」 アジトでギンジの言動がやけに幼稚だと感じたのも、つまりは見た目が20代後半に見える彼の中身が、実は12~3歳そこらの、少年だからだったというわけで。 見た目は30歳に相応しい逞しい身体つきをした男が、私を見据える。 「家が近所だった俺たちは幼い頃に、1度だけ出会っている。家にベビーカーに乗ったお前と写っている写真が、あったんだ。まぁ、そん時のことは俺もよく覚えてないが……」 つまり、私と彼は幼馴染みってこと……? ジンは懐から、茶色く変色している古びた紙切れを取り出した。 「お前の両親からの手紙を預かってる。読んでみろ」 「えっ、私の、両親から?」 家が隣同士だった為、いつか上空都市に行くと豪語していた彼に、両親は私宛の手紙を託していたらしい。 自分を売った両親からの手紙なんて、見たくもないのが本音である。 自分たちの私欲のために我が娘を売って後悔しています、とか懺悔の言葉が綴られているのだろうと思うと、吐き気がする。 促され、嫌々ながらたどたどしい手つきで紙を開くと、そこには。 「なに、これっ……」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加