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静寂に包まれた室内では、自分の息遣いが音となって耳に届く。
「貴方が、15歳の青年……?」
「そうだ。俺たちは、地上に住む人間は、流される電波のせいで通常の2倍のスピードで身体が老いていくんだ。平均寿命が40歳と言ったが、あれは40年間しか生きられないという意味であって、見た目はちゃんと80代の老人になっていくんだ」
アジトでギンジの言動がやけに幼稚だと感じたのも、つまりは見た目が20代後半に見える彼の中身が、実は12~3歳そこらの、少年だからだったというわけで。
見た目は30歳に相応しい逞しい身体つきをした男が、私を見据える。
「家が近所だった俺たちは幼い頃に、1度だけ出会っている。家にベビーカーに乗ったお前と写っている写真が、あったんだ。まぁ、そん時のことは俺もよく覚えてないが……」
つまり、私と彼は幼馴染みってこと……?
ジンは懐から、茶色く変色している古びた紙切れを取り出した。
「お前の両親からの手紙を預かってる。読んでみろ」
「えっ、私の、両親から?」
家が隣同士だった為、いつか上空都市に行くと豪語していた彼に、両親は私宛の手紙を託していたらしい。
自分を売った両親からの手紙なんて、見たくもないのが本音である。
自分たちの私欲のために我が娘を売って後悔しています、とか懺悔の言葉が綴られているのだろうと思うと、吐き気がする。
促され、嫌々ながらたどたどしい手つきで紙を開くと、そこには。
「なに、これっ……」
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