episode:2

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【愛する雲雀へ。久しぶり。元気にしていますか?上空都市での生活は、どうですか? 父さんと母さんは、地上でそれなりに元気に暮らしています。上空都市の在住権を1人分しか獲得できなかったこと、今でも後悔しています。幼い貴女を1人で空に送ったこと、悔やんでも悔やみきれません】 今まで信じていた人生が覆され、悲しみで喉の奥がヒリヒリと焼け付くように痛みだす。 「うそ、そんな……私、てっきり売られたのかと思って……。父さんたちも、きっと同じ上空都市にいると信じてたのに……」 【母さんの知り合いにダンサーがいて、その人も上空都市に行くことが決まったそうです。雲雀はそこで住み込みで働くことになりました。地上では、40年間しか生きれません。雲雀のことを想えば、この選択で良かったのだと、何度も空を見上げては溢れる涙を止めて、自分達に言い聞かせてきました】 紙を持つ手が震え、文字にはぽたぽたと、黒いシミが出来ていく。 【父さんと母さんは、あと数年で地上からいなくなります。もし、この世界から消えてしまったとしても。今度は誰よりも雲雀に近い場所、上空から、雲雀のことを見守っているからね。最後に。雲雀、父さんと母さんは、貴女のことを、ずっとずっと愛しているよ】 落ちゆくそれが自分の涙だと気付いた時には、もう遅い。 止めどなく溢れる涙は、決壊したダムのように頬を滑り落ちていった。 「うぅ……っ。お父さん、お母さんっ」 ジンが優しく頭を撫でてくる。 「親父さんとおばさんは、数年前に亡くなった。この手紙をいつかヒバリに渡してくれと頼まれて、俺はずっとお前を探していたんだ」
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