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ダンスホールに、ひとつの銃声が響いた。
それは天井を打ち抜き、砕け散ったライトの破片が、ダンサーや客の頭上に降り注ぐ。
「キャァァァァァ! 」
「なっ、なんだ?! 銃声っ?」
慌てふためくホール内では、客の悲鳴と不釣り合いな音楽が響いていた。
一変してしまった現状に、脳内を整理する。
銃声ってことは、客同士の喧嘩かなにか?
もしかして、テロとかじゃ……?
「ヒバリ、何ぼさっとしてんのっ。早く舞台から降りて、お客さんを避難通路に誘導するのよ!」
目尻を赤く塗り潰した派手なメイクを施した先輩にそう怒鳴られ、渋々舞台から降りる。
入り口の近くでは、黒づくめのガードマン達が、恐らく発砲したであろう男を取り押さえていた。
「お前、なんてことしやがるんだ!」
しかし、男は床に這い蹲りながら、不自然な笑みを浮かべていた。
ニヤリと白い歯を見せる男の表情に、胸が底知れない不安に掻き立てられる。
取り押さえられている現状なんか微塵も気にしていない、異常さ。
これからもっと良くない事がなにか起こりそうな……そんな不安が、私の鼓動を早くさせる。
そして、男は何かを呟く。
「楽しいパーティの、始まりだ」
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