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容赦ない銃声が、ダンスホールを縦横無尽に飛び交う。
流れ弾に当たった周囲の人々が、声を上げる間も無く、バタバタと命を落として人形みたいに倒れていく。
「おい、お前ら! 早く避難路へ案内しろよ!」
客が一斉に、一際目立つ花魁姿をした私たちに集まって来てしまった。
「皆さん、早く! コッチです!あの緑の扉に向かって、走って!!」
先輩が腕を翳して声を張り上げると、金持ち達は一目散に指示された方向へと逃げて行った。
「あ、余計なことしちゃってる女の子、発見~」
狙いが定められれば、誘導を行っていた先輩の腕に、幾つもの銃弾が貫通する。
「ああっ、いっ、」
歯を食いしばり、それでも先輩は人を助けることを止めなかった。
誘導を続ける彼女に、私は思わず声を荒げる。
「先輩、もう止めましょう、それ以上は、先輩がっ……」
ついに手を下ろした先輩を、幾人かの客が小突いて行った。
「おい! お前らは逃げんじゃねぇぞ! 何の価値もない捨て子より、俺らの方が命の価値、高いんだからな!」
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