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涙が出る人の数は多くなかったが、調べていくうちに、満月を見上げて流れ出た涙の中に共通の成分が含まれていることが発見された。
それは、とある薬品のもとになる成分だった。
その薬品は「花薬」と呼ばれ、花言葉通りの効能を人に与える。もちろん、精神に作用するような薬品の作製は即座に国によって禁止されることとなった。
例えば、赤いバラ。
「愛しています」というこの花言葉をもとに作られた薬は、いわゆる惚れ薬とされ、禁止薬物に指定されることとなった。好きではない人と無理やり結ばれる方も、いつ効果が切れるか分からないまま過ごし続ける方も不幸でしかない。同様の理由で、恋や愛に関するものは、親愛を意味するものをのぞいて、禁止されることとなった。
一方で、幸福を祈る花言葉の薬品は大量に出回るようになった。確実性のあるおまじないのような花薬は、一気に人々の間で話題になり、まがい物まで作られるほどになってしまった。
そうした結果、「花薬」を作れる「花薬師」は国に登録されなければ製剤はできず、満月の夜に流れた涙の量によって、一か月に生産できる量は決められることになった。
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