144人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
「サービスさせていただきます。お客様の級友を思うお優しい気持ちに対して。ぜひまた当店で花薬をお買い求めくださいね」
などと嘯くが、実際のところ、ユラもバーンハートに絆されているのだった。
バーンハートは待ち時間の間、また店内にある花薬を見学して回ることにしたようで、立ち上がってショーケースの方へと向かう。その背を見送って、ユラは包装のために店の奥へと引っ込む。
すると、さっきまでカウンターにいたはずのマリーがそこにいた。
「な~にが『お客様の優しい気持ちに対して』よ! あんたもすっかり彼の虜なんじゃないの」
にやにやとマリーがユラの顔を覗き込んでくる。ずいぶんと楽しそうな様子である。
「ええ、そうよ。あんな素敵な人に、かわいらしい理由で花薬を購入してもらえるなんて光栄なことだわ」
素直に認めるユラに面食らい、マリーは先ほどとは打って変わって、驚いた顔を見せる。そんなマリーに、ユラは「それに」と言葉を続ける。
「彼がここで花薬を買って人に贈ったことが彼の学校で広まったら、きっと一時的でも客は増えるわ。包装をサービスするくらいの見返りは見込めるもの」
最初のコメントを投稿しよう!