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幸せの見つけ方
レンガづくりの建物が並ぶ街並みで、ひと際目を引く赤いレンガの建物がある。
「Kukka Kieli」と書かれた看板のかかったその建物の前に立つと、かぐわしい花の香りがそこから流れてきていることが分かる。
たくさんの種類の香りが混じっているが、それら一つひとつがしとやかさを失わず、互いを引き立て合うように漂う。建物の奥にある柔らかな午前の光があふれる工房では、揃いのモスグリーンのエプロンドレスを着た二人の女性が作業をしている。
「あ~あ、ユラがうらやましいわ」
煮詰まっている大なべをゆっくりと混ぜている女性に対して、別の机でビンのラベルを作っている女性がやかましく声をかける。
「私こそ、あなたがうらやましいわ、マリー。だってたくさん薬を作れるんだもの。それって素敵なことじゃない」
声をかけられた女性──ユラは作業を止めて、憮然としたマリーの表情を正面から受け止める。どうやらマリーは作業に飽きてきたらしい。だがそれはユラの作業を邪魔する理由にはならない。あまり声をかけてほしくないのがユラの本音である。
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