144人が本棚に入れています
本棚に追加
この作業がうまくいかなかったら、ユラはもちろん、マリーにとっても死活問題になりかねない。
「それを言うなら、たくさん作るために、たくさん神経使っているっていうことなのよ?」
マリーは目の前にある鮮やかな色の丸薬を指さす。木のボウルに山積みになったそれは、揺らせばす
ぐに崩れ落ちてしまいそうだ。
「それはそうだけど、マリー、静かにしてくれる? 私は月に一つしか薬を作れないの。それがうまくいかなかったら、それにその薬が売れなかったら、一か月も節約生活なのよ。あなたはひと月、家庭菜園のハーブだけで食いつないだことがあるの?」
と問うと、マリーはまなじりを吊り上げる。ユラにとっては、もう見慣れた表情だ。
「量を作ったって、あんたのと比べたら値段は雲泥の差じゃないの! ハクリタバイってやつよ」
知ったばかりの言葉を使いたいのだろう。マリーはその後も薄利多売と何度もつぶやいた。
ある日、大陸の西にある小さな国で、満月を見上げると必ず涙がでるという症状を訴える人々が現れた。
最初のコメントを投稿しよう!