144人が本棚に入れています
本棚に追加
いくらかうなずいたあと、納得した様子で老婦人は口を開く。
「最近、主人が亡くなったの。それからというもの、なんだか生活にハリがなくて…。そうしたら孫に、しっかりとお別れをするためにも、ってカランコエの花薬を勧められたんですの」
「そうでございましたか。そういった理由でしたら、問題なく処方させていただくことができます。カランコエに限定されませんが、同じ花でも花言葉は様々あります。つまり、同じ花が原料であっても、効能にいくつか種類がございます。お孫様はどの効能のカランコエの花薬が良いか、おっしゃっておられましたか?」
マリーの接客技術に、ユラは内心舌を巻く。客からあそこまでの情報を引き出すことは、彼女には難しいだろう。接客はマリーがメインでユラがサポート、という形の方がいいのではないかと常々思っている。頭のなかでシミュレーションをしてみるが、完璧な布陣としか思えない。
「はい、ええと、確か孫がくれたメモがここに…。ああ、ありましたわ。『カランコエ:たくさんの小さな思い出』の花薬をいただけるかしら。これがいいって言われましたの。おいくらになるかしら?」
最初のコメントを投稿しよう!