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にやりと笑うユラに、マリーは「まあ、恐ろしい」と言って肩をすくめ、店の方へと戻っていく。
そんなマリーを余所に、ユラは包装作業を始める。ほどなくして出来上がったプレゼント用の花薬を手に、店内へユラが戻ると、先ほどよりも騒がしくなっていた。騒ぎの真ん中にいるのはバーンハートだ。しかし本人はそんなことに気付いていない様子である。
よほどこんな状況に慣れているのか、それとも本当に気付いていない鈍感な人間なのかは定かではないが、おかげでバーンハートを見つけることは容易いものの、近寄り難くなっている。
「すみません、通ります、ごめんなさい」
と、同じ3語を繰り返して、なんとかバーンハートに近付く。バーンハート本人の周りは空いており、人の壁を乗り越えると、すぐにバーンハートはユラに気が付く。
「ああ、店員さん。なんだかさっきより疲れていらっしゃるように見えるんですけど、大丈夫ですか?」
どうやら、鈍感な人間という見立てが正しかったようだ。
「いえ、ご心配なく。それよりも、こちらをどうぞ」
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