友愛の先に

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 そう言ってユラは、バーンハートに丁寧に包装された『キバナコスモス:野性的な美しさ』を差し出す。嬉しそうなまぶしい笑顔を見せて、バーンハートは受け取る。 「ありがとうございます! こんなに綺麗に包装してくださるなんて……。きっと渡すときに自信になります。本当にありがとうございます」  バーンハートの笑顔に、ユラの後ろで小さく黄色い歓声が沸き起こる。のんきなものだとは思いつつ、少し慣れてきた営業スマイルを絶やさずにバーンハートに対して言葉を発する。 「いい思い出になるといいですね。よろしければ、またいらしたときに、お相手とのお話をお聞かせください」  そう言ったユラに対し、バーンハートは微笑んでうなずくと、店を出ていった。  翌日の夕方、新しい客がやってきた。身長は平均程度でスタイルも普通。そしてチェックのシャツにジーンズと斜めかけのバッグを組み合わせており、少し厚めのレンズの眼鏡をかけた、気弱そうで野暮ったい雰囲気の青年だった。 「こちらの商品、返品したいんですけど」
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