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そろりそろりと、人波を縫ってユラのいるカウンターまでやってきたその青年は、見た目とは裏腹に凛とした声で話しかけてきた。
「ご事情によりますが、承っております。まずはお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ」
青年が周りを見渡すのと同時に、ユラは手で応接用の場所を指し示す。
「あちらでお伺いいたします。」
ユラは青年を応接セットに案内し、店内のショーケースの整理をしていたマリーに、声をかける。
「マリー、返品対応に入るから、カウンターの方をお願いできる?」
「返品? 珍しいわね。ていうか、あのお客様って初めて来た人じゃない?」
「とにかく話を聞いてみるわ」
マリーが言ったように、返品というのは珍しい。それに買った本人ではなさそうであることから、長期の対応になりそうだと判断したのだ。
「お待たせいたしました。まずはお名前をお聞かせいただけますでしょうか?」
「マドック・レッキー」
「それではレッキーさん、ご事情をお伺いしてもよろしいでしょうか? 今回処方させていただいた花薬は、お体に合いませんでしたか?」
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