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そう聞くと、マドックはバッグに手を入れる。しばらくごそごそと中身を探った後に、大事そうに紙袋を取り出した。そしてその紙袋から取り出したのは、未開封の包装紙にくるまれた花薬だった。
ユラにはそれに見覚えがあった。なぜなら昨日包装したばかりの、あのバーンハートに渡した花薬の包装紙だったからだ。
「貰い物です。お……、僕には必要ないんですよ。包装は開けちゃったけど、中身には触っていないし、大丈夫ですよね」
怒っているわけではなさそうだが、妙に威圧感のある話し方をする青年だった。
「失礼ですが、こちらの商品はお客様がご購入したものではありませんよね? 返品を受け付けるために、もう少しだけ詳しくご事情をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
ユラがそう告げると、マドックは眉間に皺を寄せ、ゆっくりと口を開いた。
「僕もいらないし、くれたヤツにも合わなさそうだから、金で返すのが一番だと思うんですよ。……それに、野性的な美しさってなんだよ」
吐き捨てるように言って、マドックは口をつぐむ。
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