友愛の先に

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「お客様それぞれの事情があるでしょうし、私がそこに介入するのもおかしなことだとは思うのですが、プレゼントには少なからず贈り主の気持ちが込められています。どうして、いらないと思われるのでしょうか?」  できる限り感情を抑えて、ゆっくりとした口調でマドックに問う。贈り物をいらないと思うのも個人の自由だ。けれど、マドックのやり方は贈り主を傷つけてしまう。ユラは人の気持ちを踏みにじるようなことは許せなかった。 「それを寄越したのは、僕の通う高校でも異常なほどに人気があるヤツです。周りにちやほやされてへらへらしているようなヤツに、『君は本当の自分を出すべきだ』なんて訳知り顔で言われたら、腹も立つだろうが!」  だんだんと口調が激しくなっていき、最後は机を殴りそうな勢いだったが、マドックは腕を組んで青筋を浮かべるだけにとどまっている。 「いらない、迷惑だって言っても、無理やり腕に押し付けてきた。それでも受け取らなかったら、お……、僕の足元に置いて逃げやがった」  怒り心頭の理由が、花薬そのものよりもバーンハートの態度が主なものだと分かり、ユラは自分に対処できる問題ではないと結論付けた。
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